TL;DR
BMJに掲載された研究では、GLP-1薬などの減量薬をやめると、体重が戻りやすいことが示されています。
ただし、それをそのまま「GLP-1はリバウンドしやすい」と受け取るには、少し慎重な見方が必要です。
GLP-1薬やチルゼパチドは、通常の生活改善よりも大きく体重を下げやすいため、薬をやめた後に戻るkg数も大きく見えやすくなります。
本当に見たいのは、「何kg戻ったか」だけではありません。
大切なのは、
- 開始BMI
- 最低BMI
- 最終BMI
の流れです。
つまり、薬でどこまで下がり、やめた後にどこへ落ち着いたのかを見る必要があります。
GLP-1薬は大きく痩せやすい一方で、やめると体重が戻りやすいことも研究上示されています。だからこそ、短期的に体重を落とすだけでなく、薬を使っている間に、維持できる食事量・運動習慣・目標BMIを考えておくことが大切です。
1. はじめに:「リバウンドしやすい」という言葉だけで判断しないために
最近、「GLP-1薬をやめると体重が戻る」「リバウンドが早い」といった研究紹介を見かけるようになりました。
たしかに、BMJに掲載されたシステマティックレビューでは、減量薬をやめた後に体重が戻りやすいことが示されています。
ただし、この研究をそのまま「GLP-1はリバウンドしやすい薬」と受け取るには、少し慎重な解釈が必要です。
なぜなら、GLP-1薬やチルゼパチドは、通常の生活改善よりも大きく体重を下げやすい薬だからです。
大きく痩せる薬だからこそ、やめた後に「戻ったkg数」も大きく見えやすい。この記事では、その点を丁寧に整理していきます。
研究情報
West et al.(2026)
論文名:Weight regain after cessation of medication for weight management: systematic review and meta-analysis
掲載誌:The BMJ, 2026;392:e085304
研究デザイン:システマティックレビュー・メタ解析
対象:37研究、63介入群、9,341人
DOI:10.1136/bmj-2025-085304
URL:https://www.bmj.com/content/392/bmj-2025-085304
2. BMJ研究が示したこと:薬をやめると体重は戻りやすい
まず、研究が示している内容そのものは、とても大切です。
BMJのシステマティックレビューでは、37研究・9,341人を対象に、減量薬を中止した後の体重の戻り方を分析しています。
その結果、減量薬をやめた後の体重再増加は、平均で月0.4kg程度とされました。
さらに、セマグルチドやチルゼパチドのような新しい薬では、月0.8kg程度と、より速く戻る傾向が示されています。
また、薬をやめた後の体重の戻りは、食事・運動・生活習慣改善を中心とする行動療法が終わった後よりも速い、と報告されています。
ここだけを見ると、たしかに「GLP-1薬はリバウンドしやすいのでは?」と感じるかもしれません。
研究情報
West et al.(2026)
論文名:Weight regain after cessation of medication for weight management: systematic review and meta-analysis
掲載誌:The BMJ, 2026;392:e085304
研究デザイン:システマティックレビュー・メタ解析
検索対象:Medline、Embase、PsycINFO、CINAHL、Cochrane、Web of Science、試験登録データベースなど
検索期間:各データベース開始時点から2025年2月まで
主な評価項目:減量薬中止後の体重再増加速度、心血管代謝マーカーの変化
主な結果:減量薬中止後の体重再増加は平均0.4kg/月。セマグルチド・チルゼパチドでは0.8kg/月。
DOI:10.1136/bmj-2025-085304
URL:https://www.bmj.com/content/392/bmj-2025-085304
PubMed:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41500720/
BMJ Groupプレスリリース:https://bmjgroup.com/stopping-weight-loss-drugs-linked-to-weight-regain-and-reversal-of-heart-health-markers/
3. ただし、薬の方がそもそも大きく痩せやすい
ここが、この記事で最も大切なポイントです。
セマグルチドやチルゼパチドは、通常の生活改善よりも大きな体重減少を起こしやすい薬です。
そのため、薬をやめた後に「月に何kg戻ったか」だけを見ると、薬によるリバウンドが必要以上に大きく見えてしまう可能性があります。
Reutersの記事でも、研究者は次のような趣旨の説明をしています。
セマグルチドやチルゼパチドでは、体重が戻るスピードは速い。
けれど、そもそも最初に大きく痩せているため、ベースライン体重に戻るまでの期間は、他の薬と大きく変わらない。
つまり、薬で深く体重を下げたぶん、やめた後の戻り幅も大きく見えやすい、ということです。
参考情報
Reuters(2026年1月7日)
記事名:Less than two years after stopping obesity drugs, weight and health issues return, study finds
内容:BMJ研究について、減量薬中止後の体重再増加と心血管代謝マーカーの反転を紹介。セマグルチド・チルゼパチドは戻り速度が速い一方、初期減量も大きいため、ベースライン体重へ戻るまでの時間は他薬剤と近いという研究者コメントを掲載。
URL:https://www.reuters.com/business/healthcare-pharmaceuticals/less-than-two-years-after-stopping-obesity-drugs-weight-health-issues-return-2026-01-07/
4. 「何kg戻ったか」だけでは見えないこと
少し例で考えてみます。
70kgの人が、薬で50kgまで落ちて、その後65kgに戻ったとします。
一方で、通常のダイエットで60kgまで落ちて、その後65kgに戻った人がいたとします。
この場合、最終体重はどちらも65kgです。
でも、最低体重から見ると、
- 50kgまで落ちた人は、15kg戻った
- 60kgまで落ちた人は、5kg戻った
という見え方になります。
これだけを見ると、薬で痩せた人の方が大きくリバウンドしたように感じます。
しかし、実際にはどちらも最終的には65kgに落ち着いています。
つまり、薬でより深く体重を下げたために、最低体重からの戻り幅が大きく見えている可能性がある、ということです。
5. 「戻り幅 ÷ 痩せ幅」で見ても、まだ十分とは言えない
では、「何kg戻ったか」ではなく、「減った分の何%が戻ったか」で見ればよいのでしょうか。
これは一見、公平な見方に思えます。ただし、これだけでも十分とは言えません。
70kgから50kgまで落ちて65kgに戻った場合、20kg痩せて15kg戻ったので、戻り率は75%です。
70kgから60kgまで落ちて65kgに戻った場合、10kg痩せて5kg戻ったので、戻り率は50%です。
数字だけを見ると、前者の方が大きく戻ったように見えます。
しかし、最終体重はどちらも65kgです。
同じ生活に戻り、同じ体重に落ち着いたのであれば、75%戻った人の方が「リバウンドしやすい体質になった」とまでは言えません。
単に、より低い体重まで一度落ちたために、最低体重から見た戻り率が大きく見えている可能性があります。
6. 本当に見たいのは、BMIの流れ
体重をkgだけで見ることにも、少し注意が必要です。
100kgの人が10kg痩せるのと、50kgの人が10kg痩せるのでは、意味がまったく違います。
同じ10kg減でも、前者は10%減量、後者は20%減量です。健康上の意味も、身体への負担も変わります。
だから、GLP-1薬のリバウンドを考えるなら、本来は次の3つを見る方がわかりやすいです。
- 開始BMI
- 最低BMI
- 最終BMI
つまり、「どのBMIから始まったのか」「薬でどこまで下がったのか」「薬をやめた後、どこに落ち着いたのか」を見るということです。
最低体重から何kg戻ったかだけではなく、最終的に、開始時点よりどれくらい良い状態を維持できているのか。
ここを見る方が、実態に近い評価になります。
7. BMJ研究の限界:BMIの流れを中心に見た研究ではない
BMJ研究は、とても重要な研究です。
ただし、主な分析はkgベースの体重再増加であり、「開始BMI → 最低BMI → 最終BMI」という流れを中心にした比較ではありません。
また、薬をやめた後と、行動療法が終わった後の比較も、完全に同じ条件で「薬だけ」を差分にした比較ではありません。
BMJ側も、研究デザインや質にばらつきがあること、新しいGLP-1系薬剤を扱った研究が限られること、最大フォローアップが12か月であることを限界として挙げています。
そのため、この研究から言えるのは、まずは次のところまでです。
- 「減量薬をやめると体重は戻りやすい」
- 「薬をやめた後の戻りは、行動療法後より速い可能性がある」
一方で、
- 「GLP-1薬が特別にリバウンド体質を作る」
- 「薬で痩せた人は、通常ダイエットより本質的に戻りやすい」
とまで言い切るには、慎重な見方が必要です。
研究情報
West et al.(2026)
論文名:Weight regain after cessation of medication for weight management: systematic review and meta-analysis
掲載誌:The BMJ, 2026;392:e085304
研究デザイン:システマティックレビュー・メタ解析
対象:37研究、63介入群、9,341人
平均治療期間:39週
平均フォローアップ:32週
主な限界:新しいGLP-1系・チルゼパチド系の研究は8件に限られ、薬剤中止後の最大フォローアップは12か月。薬剤研究と行動療法研究の比較は間接比較。
DOI:10.1136/bmj-2025-085304
URL:https://www.bmj.com/content/392/bmj-2025-085304
8. セマグルチド中止後の研究:STEP 1延長試験
セマグルチド2.4mgのSTEP 1延長試験では、68週間の治療後に薬と生活介入を中止した後、1年で減量分の約3分の2を取り戻したと報告されています。
これは、薬をやめると体重が戻りやすいことを示す、とても重要なデータです。
ただし、このデータも、「薬で深く下がった体重が、薬なしの生活で維持できる水準へ戻った」と読む余地があります。
だからここでも、最低体重から何kg戻ったかだけでなく、開始時点から見て、最終的にどれくらい改善が残っているのかを見ることが大切です。
研究情報
Wilding et al.(2022)
論文名:Weight regain and cardiometabolic effects after withdrawal of semaglutide: The STEP 1 trial extension
掲載誌:Diabetes, Obesity and Metabolism, 2022;24(8):1553–1564
研究デザイン:STEP 1試験の延長解析
対象:延長解析327人
薬剤:セマグルチド2.4mg 週1回皮下注射
治療期間:68週
中止後フォローアップ:52週
主な結果:セマグルチド群は68週時点で平均17.3%減量。その後、薬と生活介入を中止し、120週時点で11.6ポイント分が戻った。結果として、開始時点からは5.6%低い体重が残った。
DOI:10.1111/dom.14725
PubMed:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35441470/
論文全文:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9542252/
ClinicalTrials.gov:NCT03548935
9. チルゼパチド中止後の研究:SURMOUNT-4
チルゼパチドのSURMOUNT-4試験でも、薬を中止した後に体重が戻ることが示されています。
SURMOUNT-4は、まず36週間チルゼパチドを使い、その後、薬を続ける群とプラセボへ切り替える群に分けた試験です。
36週時点で、参加者は平均20.9%の体重減少を経験しました。
その後、チルゼパチドを続けた群ではさらに体重が減りましたが、プラセボへ切り替えた群では体重が戻りました。
この試験でも、食事・運動指導は行われていました。
つまり、単なる「薬だけで痩せて、薬をやめたら戻った」という話ではありません。
生活指導があっても戻った、という点は大切です。
一方で、ここでもやはり、「どこまでBMIが下がり、最終的にどこに落ち着いたのか」を見ないと、リバウンドの意味を正確には評価しにくいといえます。
研究情報
Aronne et al.(2024)
論文名:Continued Treatment With Tirzepatide for Maintenance of Weight Reduction in Adults With Obesity: The SURMOUNT-4 Randomized Clinical Trial
掲載誌:JAMA, 2024;331(1):38–48
オンライン公開:2023年12月11日
研究デザイン:第3相ランダム化中止試験
対象:670人
薬剤:チルゼパチド 10mgまたは15mg、週1回皮下注射
試験期間:36週間のオープンラベル導入期間、その後52週間の二重盲検期間
主な結果:36週時点で平均20.9%減量。その後、チルゼパチドを続けた群は追加で5.5%減量し、プラセボへ切り替えた群は14.0%体重が戻った。
DOI:10.1001/jama.2023.24945
URL:https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2812936
ClinicalTrials.gov:https://clinicaltrials.gov/study/NCT04660643
10. SURMOUNT-4の事後解析:戻り幅と心血管代謝指標
SURMOUNT-4の事後解析では、チルゼパチドを中止した後、体重が戻った人ほど、血圧・血糖・脂質などの改善も反転しやすいことが示されています。
この解析では、36週間のチルゼパチド治療で10%以上減量した参加者のうち、プラセボへ切り替えられた人を対象にしています。
中止後1年で、多くの参加者が初期減量分の25%以上を取り戻しました。
そして、体重の戻りが大きい人ほど、ウエスト、血圧、non-HDLコレステロール、HbA1c、空腹時インスリンなどの改善が戻りやすい傾向がありました。
この研究は、単に「体重が戻るか」だけではなく、「体重が戻ると、健康指標の改善も戻りやすい」という点を示している意味で重要です。
研究情報
Horn et al.(2026)
論文名:Cardiometabolic Parameter Change by Weight Regain on Tirzepatide Withdrawal in Adults With Obesity: A Post Hoc Analysis of the SURMOUNT-4 Trial
掲載誌:JAMA Internal Medicine, 2026;186(2):157–167
オンライン公開:2025年11月24日
研究デザイン:SURMOUNT-4試験の事後解析
対象:308人
対象条件:36週間のチルゼパチド治療で10%以上減量し、その後プラセボへ切り替えられた参加者
主な結果:中止後1年以内に、参加者の多くが初期減量分の25%以上を取り戻した。体重の戻りが大きいほど、ウエスト、血圧、non-HDLコレステロール、HbA1c、空腹時インスリンなどの改善も反転しやすかった。
DOI:10.1001/jamainternmed.2025.6112
URL:https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2841273
ClinicalTrials.gov:https://clinicaltrials.gov/study/NCT04660643
11. 実務的な結論:短期で使って終わり、では維持が難しい
ここまでをまとめると、GLP-1薬について一番正確な言い方はこうです。
GLP-1薬は、通常の生活改善より大きく体重を下げやすい薬です。そのため、薬をやめた後に戻るkg数も大きく見えやすくなります。
ただし、それを単純に「GLP-1はリバウンドしやすい」と表現してしまうと、少し一面的な理解になってしまいます。
本当に見るべきなのは、
- 開始BMI
- 最低BMI
- 最終BMI
- 最終的に、開始時点からどれだけ改善が残ったか
です。
一方で、薬をやめると食欲を抑える作用が外れるため、体重が戻りやすいこと自体は、研究上かなり一貫して示されています。
だから、GLP-1薬を使うなら大切なのは、「どこまで痩せるか」だけではありません。
薬を使っている間に、
- 維持できる食事量
- タンパク質摂取
- 筋トレ・身体活動
- 薬を減らす、またはやめる場合の維持ライン
- 目標体重ではなく、目標BMI
まで考えておくことが大切です。
12. まとめ
BMJ研究は、「減量薬をやめると体重が戻る」という重要な事実を示しています。
ただし、それをそのまま「GLP-1はリバウンドしやすい」と読むには、少し注意が必要です。
GLP-1薬は大きく痩せやすい薬です。だから、最低体重から見た戻り幅も大きくなりやすい。
「何kg戻ったか」「減った分の何%が戻ったか」だけでは、評価として十分とは言えません。
本当に見たいのは、
- 開始BMI
- 最低BMI
- 最終BMI
です。
GLP-1薬で深く下がった体重が、薬なしの生活で維持できる水準まで戻ったとしても、それをそのまま「リバウンド体質になった」とは言えません。
より正確には、
GLP-1薬は大きく痩せやすい。
ただし、やめると体重は戻りやすい。
その戻りを評価するときは、kgだけではなくBMIの流れで見る必要がある。
という話です。
参考文献
- West S, Scragg J, Aveyard P, Oke JL, Willis L, Haffner SJP, et al.
Weight regain after cessation of medication for weight management: systematic review and meta-analysis.
The BMJ. 2026;392:e085304.
doi:10.1136/bmj-2025-085304
https://www.bmj.com/content/392/bmj-2025-085304 - Wilding JPH, Batterham RL, Davies M, et al.
Weight regain and cardiometabolic effects after withdrawal of semaglutide: The STEP 1 trial extension.
Diabetes, Obesity and Metabolism. 2022;24(8):1553–1564.
doi:10.1111/dom.14725
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35441470/
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9542252/ - Aronne LJ, Sattar N, Horn DB, et al.
Continued Treatment With Tirzepatide for Maintenance of Weight Reduction in Adults With Obesity: The SURMOUNT-4 Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2024;331(1):38–48.
doi:10.1001/jama.2023.24945
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2812936 - Horn DB, Linetzky B, Davies MJ, et al.
Cardiometabolic Parameter Change by Weight Regain on Tirzepatide Withdrawal in Adults With Obesity: A Post Hoc Analysis of the SURMOUNT-4 Trial.
JAMA Internal Medicine. 2026;186(2):157–167.
doi:10.1001/jamainternmed.2025.6112
https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2841273 - Reuters.
Less than two years after stopping obesity drugs, weight and health issues return, study finds.
Published January 7, 2026.
https://www.reuters.com/business/healthcare-pharmaceuticals/less-than-two-years-after-stopping-obesity-drugs-weight-health-issues-return-2026-01-07/ - ClinicalTrials.gov.
SURMOUNT-4 Trial, NCT04660643.
https://clinicaltrials.gov/study/NCT04660643